私達は結婚したのでもう手遅れです!
「王子……」

後ろからついてきた竜江(たつえ)さんと仙崎(せんざき)さんが王子発言が気になったのか、つぶやく声がして振り返った。

「あっ……!すみません。たとえですっ!たとえ。冬悟さんって紳士で穏やかで優しくてかっこいいじゃないですか。だから、王子様みたいだなって」

二人はなぜかドン引きしていた。
もしかして、乙女発言すぎた?
それとものろけたから?
あり得るっ!
気を付けようと反省しながら、前を向くと冬悟さんは私とは逆に後ろの二人になにか視線を送り、同じように前を向いた。
会社入口の広いエントランスに入ると、受付が見えた。
エレベーターが二台、そして軽食がとれるカフェ。
スーツを着た人達が忙しそうに歩いている。
テレビドラマで見るみたいな光景が広がっていた。
想像以上に大きな会社だった。
冬悟さんの姿に気づくと社員がずらっと並び、頭を下げる。

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