私達は結婚したのでもう手遅れです!
「社長室は一番上ですよ。もし、迷うことがあってもエレベーターで一番上までくれば大丈夫ですから」

「はい」

迷子かぁ。
確かにこれだけ大きなビルだと迷子になりそう。
社長室を開けると黒い革の応接用ソファーが置かれ、中央には大きな机、そしてL字型の机は秘書専用だろうか。
すぐ隣の片隅に秘書用の机が用意されてあった。

「羽花さんはそちらの席でもいいですし、ソファーでも構いませんよ」

「はい!それじゃあ、仕事をお手伝いしたいので隣の机のほうに座らせてもらいますね」

すすっと机に座ろうとした時、額縁にドーンといれて飾ってある言葉があった。
でかでかと達筆な字で『風林火山』と書いてある。

「壮大ですね」

仙崎さんが私の言葉に深くうなずいた。

「こちらは先々代がお書きになったものです。豪快な字を書かれる方でした」

「あ、そうだ。羽花さんも代紋(だいもん)をつけておくといいですよ」

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