私達は結婚したのでもう手遅れです!
「ダイモン?」

竜江さんが私にバッチを渡してくれた。

「社章だ」

冬悟さんから注意された竜江さんは『そうともいいますね』と言いながら、襟元に銀色の素敵なバッチをつけてくれた。
星のような交差した直線に嶋倉という文字が彫られてある。
スーツを着てヒールある靴を履いて、こんなかっこいいバッチをつけるとオフィスで働くデキる女に見える―――かもしれない。
ちらっと窓ガラスにうつる私の姿を見たけど、冬悟さんと並んでいると職場体験にきた学生みたいで見るんじゃなかったと悲しい気持ちになった。

「じゃあ、簡単な仕事から―――」

私がくるりと冬悟さんの方へ向いたその瞬間、社長室のドアがバーンっと勢いよく開き、すばやく竜江さんと仙崎さんが前に飛び出した。

「朝から物騒ねぇ。嶋倉の人間はこれだから」

血のように赤い口紅、長い黒髪、スタイルのいいモデル風の美人が社長室に入ってきた。
< 73 / 386 >

この作品をシェア

pagetop