私達は結婚したのでもう手遅れです!
憧れの人だった冬悟さんだけど、私には雲の上のような人だってわかった。

「俺と別れるということか?」

いつもの雰囲気と違うことに気づいて顔をあげた。
冬悟さんはメガネをはずし、テーブルの上に置く。
目が鋭く威圧感があり、有無を言わせない強さがあった。

「羽花の俺への気持ちはその程度ってことか」

皮肉な笑み。
こんな顔をするんだと驚いて目を大きく見開いていると冬悟さんがすっと白い紙切れを取り出した。

「三千万円は払ってもらう。これは誓約書がわりだ」

「は、はい。分割払いでしょうか」

「そうだな。支払いやすいようにしておいた」

サインと判子がいるらしく、うなずいてサインと判を押した。

「こちらの誓約書にも」

「はい」

同意しますかという文字が見え、サインと判を押した。

「これで契約成立だな」

「それじゃあ―――」

「よろしく。奥さん」

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