私達は結婚したのでもう手遅れです!
にこっと笑った冬悟さんの顔はとてつもなく悪い顔をしていた。

「えっ!?お、奥さん?」

とんとんっと指でテーブルを叩かれて、その二枚の紙に視線をおとした。

「婚姻届っ!?えっ?」

近くで見ようと手を伸ばした瞬間、それをさっと奪われてしまった。
そして、冬悟さんはすかさず自分の胸ポケットに差し込む。
残り一枚は誓約書だった。
『私、柳屋羽花は三千万円の支払いの代償として嶋倉冬悟と結婚します。以上に同意しますか』
『同意します。柳屋羽花』
そして、判をバッチリ押してあった。

「これで逃げられないな。逃がすつもりはなかったが」

冬悟さんはネクタイとシャツのボタンをはずす。

「正直、かたっくるしいのは好きじゃない」

「私を騙したんですかっ?」

「騙した?人聞きが悪い。三千万円の借金がある女を妻にして、店を救った上にいい暮らしをさせてやる。これのどこが悪いことだ?」

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