私達は結婚したのでもう手遅れです!
それは明るくて怖さがなくて、まるで無邪気な男の人の声だった。
これが本当の冬悟さん?

「誰と比べて小さいって?」

「礼華さんです……」

だから、私も素直に言った。
一瞬の戸惑いが手から伝わり、冬悟さんの存在を近くに感じた。

「嫉妬してたのか」

「します……。私が礼華さんに敵うところはなにもありませんから」

泣きたい。
すっぽりと胸が片手におさまっている。
手のひらが私の髪をなで、そして頬を優しくなでてくれた。
顔を見ると冬悟さんのセットしたはずの前髪が落ちて幼く見え、なんだかホッとした。

「俺は羽花が好だと言った。それだけでじゅうぶんじゃないのか?」

「そ、それはそうですけど」

これはきっと自分に自信がある人間とない人間の差。
私は自信がない。
だから、冬悟さんが私を好きだと言っても信じられなかった。
無意識に自分で自分を否定していた。
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