嘘の花言葉
 ところがそれには、私の身を案じる言葉ばかりが綴られていた。

 手紙を読み終える頃には、なんて優しい人だろう……と心を揺さぶられていた。
 私はすぐに謝罪とお礼両方の気持ちを込めた手紙をしたためた。
 するとなんと、それに対する想士からの返事は和歌だったの。恋の和歌を送り合うようになったのは、これがきっかけだった。  
  
 平安は、貴族同士で恋愛するのが当たり前の時代。身分が違う者と和歌を送り合うなど、他に例がなかった。

 想士から和歌を受け取っていた侍女は、そのことを良く思っていなかったのだろう……。あっという間に屋敷中にその噂が広まり、私は変わり者扱いをされるようになった。

 その噂は父上の耳にまで届き、ついに想士は屋敷から出入禁止になってしまった。私は途方に暮れた。

 ある夜。物音がして起きてみると御簾に紙がはさげてあった。それは想士が忍び込んで持ってきた私宛の手紙だった。



 
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