嘘の花言葉
「想……」
立ち止まり、想士の目を見た。
「……そうね。本当に京都は久しぶり……」
やっぱり聞けないわ。今更「私のことが好きか」なんてみっともなくて。
想士から視線を逸らし、夜空を見上げる。幾千もの星たちが淡い光を放っていた。
「ねぇ、あの星は何ていうのかしら?」
別の話題にすり替える。
私が指差す先の星座の名を、想士はすぐに答えてくれた。天文学の知識が豊富な想士はよくこうして、星座のことを教えてくれる。想士の話を聞いていると、私も賢くなれるようで楽しい。
星座の話をしながら歩いているうちに、大きな桜の木までたどり着いていた。
足元の照明に照らされている、枝垂桜。既に満開を迎えた後で、わずかに散り始めている。
薄紅色の花が儚げに散る様は、息を呑むほどに美しい。
「……綺麗ね」
千年前のこの季節、ここで想士と会えていたら……。
「陰陽寮が火事になってよかった」
信じられない言葉に、自分の耳を疑った。
「え……何故そんなことを……」
「だって。蝶よ花よと育てられた深窓の姫君が、駆け落ちなどできまいよ」
昔を思い出しているような、遠い目をしている。
確かにあの頃の私が駆け落ちしていたら、想士に迷惑ばかりかけることになったでしょう。俗世のことなど何も知らなかったんだもの。
でも、口に出してそう言われると反論したくなった。
「できたわよ! いざとなったら、田畑を耕したわよ!」
むきになる私を見て想士が笑う。
「強がりなところも、相変わらずだ」
立ち止まり、想士の目を見た。
「……そうね。本当に京都は久しぶり……」
やっぱり聞けないわ。今更「私のことが好きか」なんてみっともなくて。
想士から視線を逸らし、夜空を見上げる。幾千もの星たちが淡い光を放っていた。
「ねぇ、あの星は何ていうのかしら?」
別の話題にすり替える。
私が指差す先の星座の名を、想士はすぐに答えてくれた。天文学の知識が豊富な想士はよくこうして、星座のことを教えてくれる。想士の話を聞いていると、私も賢くなれるようで楽しい。
星座の話をしながら歩いているうちに、大きな桜の木までたどり着いていた。
足元の照明に照らされている、枝垂桜。既に満開を迎えた後で、わずかに散り始めている。
薄紅色の花が儚げに散る様は、息を呑むほどに美しい。
「……綺麗ね」
千年前のこの季節、ここで想士と会えていたら……。
「陰陽寮が火事になってよかった」
信じられない言葉に、自分の耳を疑った。
「え……何故そんなことを……」
「だって。蝶よ花よと育てられた深窓の姫君が、駆け落ちなどできまいよ」
昔を思い出しているような、遠い目をしている。
確かにあの頃の私が駆け落ちしていたら、想士に迷惑ばかりかけることになったでしょう。俗世のことなど何も知らなかったんだもの。
でも、口に出してそう言われると反論したくなった。
「できたわよ! いざとなったら、田畑を耕したわよ!」
むきになる私を見て想士が笑う。
「強がりなところも、相変わらずだ」