君と止まることのないドキドキを
「うぉっ!」
「なんだ、こんにゃくが吊るしてあるだけじゃん」
「お前は背が小さいから当たらねぇけど、俺には顔に当たるんだよ!」
「へぇー」
と適当な返事をされてしまった。
千夏は案外余裕そうでこっちが悔しくなる。
さっきから情けない姿しか見せていない。
本当なら、怖がる彼女を安心させて引っ張っていきたいのに。
立場が逆転しすぎて、怖いものが苦手な自分が嫌になるぐらいだ。
「琉生くんって、もしかして怖いもの苦手?」
「そ、そんなんじゃねーし!」
頼りない男と思われたくなくて、強がってみる。
「じゃあ、もっと先進もうよ」
「あっ! ちょっ、待てよ!」
先行く彼女を引き止めようとしたところで、ペチャッとまたもや冷たいなにかが顔に当たった。
「‥‥‥!! な、な、なんで、またこんにゃくが!」
2連続となる吊るされたこんにゃくに驚く俺を見て、千夏はクスッと笑った。
「やっぱり、苦手なんじゃん」
「うるっせ! 笑うな!」
内心、恥ずかしくてたまらない。
「知らなかったな。琉生くんがこんなにも怖がりだったとは。付き合って2ヶ月経っても知らない一面ってあるもんなんだね」
「お前が驚かさなすぎなだけだろ!」
「そうかな? まぁ、割と子供の頃からお化け屋敷とか好きだったから平気なだけなのかも」
おばけがでてもビビりもせずスタスタと歩く彼女。