闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

「ニナも選ばれるために必死なんだねぇ」


目の前にあるショートケーキを突きながらサトコが言う。


アサミは注文したチーズケーキが運ばれてきても、それに手を出す気にはなれなかった。


帰り際に見たニナの練習光景を忘れることができない。


ニナは本気でソロパートをやりたいと思っているに違いない。


「でも大丈夫だよ。アサミがもう少し練習すればすぐに差がつくって」


黙り込んでいるアサミを元気づけるように言う。


アサミは笑顔を作り、そしてケーキを一口食べた。


そうだよね。


今更頑張ったって遅いに決まってる。


私の方がずっとずっと努力してきたんだから……。


そう思って、ケーキを一口食べたのだった。
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