闇夜ヨルの恐怖記録 5
女性は驚いた顔で振り向いたけれど相手がテツヤだとわかって安心したように微笑んだ。


それでも相変わらず顔色は悪いままだ。


ブルーのサンダルを履いた足も、玄関の鍵を持っている手も小刻みに震えていて、普通じゃない状態なのは一目瞭然だった。


「どうかしたんですか?」


テツヤは真剣な表情で質問をした。


女性は一瞬とまどったように視線を漂わせたが、よほど誰かに相談したかったのか口を開いた。


「私、ひとり暮らしなんだけど部屋の中に誰かがいるみたいなの」


ドアの向こうまで声が届かないよう、声を潜めてそう言った。


「部屋の中に?」


テツヤが眉間にシワを寄せて聞き返すと、女性は頷いた。
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