闇夜ヨルの恐怖記録 5
今まで小刻みに震えていた手足が、すっかり元通りになったのだ。


胸に渦巻いていた恐怖心はまるで霧のように晴れていった。


カツユキとジュンイチは驚いて自分の両手を見下ろしていたが、その間にカチャッと鍵が開けられる音がして顔を上げた。


女性が「ちょっと、ねぇ、大丈夫?」と、後から声をかけてくるのも聞かずに3人は同時に部屋の中に踏み込んだ。


1LDKのアパート内は一目でわかるほどに荒らされている。


さっきの大きな音は、部屋の奥で本棚が倒された音だったみたいだ。


踏み場もなくなった部屋の中を慎重に進んでいく。


3人の心臓はバクバクと早鐘を打っていたけれど、それは恐怖心からではなかった。


初めて探偵らしい探偵業をしているという高揚感からだった。


恐怖心の消え去った3人は部屋の奥へと進んでいく。


しかし、そこには誰もいない。


もうすでに外に出てしまったのかもしれない。


もしくはトイレやお風呂に隠れているのか……


テツヤが推理しながら窓へと近づいていく。


窓は閉まっていてカーテンも揺れてはいない。


と、いうことは……。


コトッ。


とても小さな物音がしてテツヤたち3人は同時に振り向いた。
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