闇夜ヨルの恐怖記録 5
黒尽くめの服の男が持つには異様だと感じたバッグ。


あれはこの人のものだったんだ。


そう気がついた3人は男が走って逃げていった方角へ視線を向けた。


道は直線だけれど男の姿はとても小さくなっている。


今から追いかけて追いつく距離じゃない。


せめて自転車でもあればいいのだけれど……。


ジュンイチがそう考えている間に、他の2人は能力ドリンクを飲んでいた。


「ジュンイチはここにいて、その人を見ていてくれ。俺たちはあの男を捕まえてくる」


テツヤはそう言って足を伸ばし、準備運動を始める。


「捕まえるってもうあんなに遠くだぞ?」


いくらサッカーで鍛えた足があったとしても追いつけるはずがない。


しかし、テツヤとカツユキは白い歯をのぞかせてニッと笑って見せた。


「大丈夫。俺たち能力があるからさ」


テツヤはそう言うや否や駆け出した。


体が軽く、足は驚くほど早く前へ前へと進んでいく。


風を切る音が耳に入ってきて、これは今自分が出している音なのだと気がついた。


気色はどんどん後へ流れていき、豆粒ほどだった男の姿が目前まで迫ってくる。
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