闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

ニナは毎日一番最初に部室に来て練習をして、一番最後まで残って練習をしているようだった。


それでもなかなか上達しないのはニナの演奏を聞いていればよくわかる。


人はどんなことでも一定まで成長したらそこから先の成長がゆっくりになる。


ときには今までできていたことだってできなくなってしまう。


いわゆるスランプというやつだ。


それを乗り越えた時に更に前に進むことができるのだけれど、スランプ状態からなかなか抜け出せずに諦めてしまう人もいる。


「なんかさ、ニナの演奏だんだん下手になってきてない?」


部活終わり、サトコに誘われてまたケーキを食べに来ていた。


ニナは案の定、今日も一人で練習を続けている。


「うん……」


アサミはプリンアラモードにスプーンを突き刺しながらぼんやりと返事をした。


スランプになったことはもちろんある。


だからそのときの辛さも十分理解しているつもりだった。


「どれだけ練習したってさ、結局能力がないと無理なんだよね」


サトコはそう言ってショートケーキにかぶりつく。


口のまわりにクリームをつけながらも、美味しそうに微笑んだ。


「アサミは能力があったから良かったよね」


アサミは顔を上げてサトコを見つめた。


悪気のない笑顔がそこにある。
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