闇夜ヨルの恐怖記録 5
女性の足が更に早くなったとき、ついに男性が走り出した。


ハイヒールと運動靴では女性の方が分が悪くなるのは明白だった。


女性はあっという間に男に追いつかれてしまい、腕を掴まれていた。


女性の甲高い悲鳴が路地に響く。


男は近くの廃ビルへと女性を連れ込もうとした、その瞬間だった。


「やめとけよ」


そんな声が聞こえてきて男の体は地面に押さえつけられていた。


それを見た女性が目を見開いて唖然として立ち尽くす。


「大丈夫ですか?」


優しい声に振り返れば、そこにはいつの間にか中学生の男の子が立っていた。


ジュンイチだ。


テツヤとカツユキは男を押さえつけている。


気配を消した3人は他人からはまるで透明人間のようにうつっていたのだ。


「あ、ありがとう」


女性は絞り出すようにそう言ったのだった。
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