闇夜ヨルの恐怖記録 5
人がどれだけ努力してきたか知らないくせに。


そんな言葉が喉元まで出かかって、慌てて押し込めた。


「そうだね」


短く返事をして、なんの味もしないプリンを口に入れたのだった。


毎日人一倍頑張っているニナを見て声をかける生徒たちが出てきた。


特に1、2年の後輩たちはニナのことをよく見ていて、帰る間際に必ず「頑張ってください」とか「おつかれさまです」を言うようになった。


自分だってみんなと同じ練習量をこなしているのに、なんだかアサミの心は晴れなかった。


それどころか、練習してもしてもうまく吹けないような気がする。


サトコは「大丈夫だよ、上手だよ」と言ってくれるけれど、不安は拭いきれなかった。
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