闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

ニナよりも私の方がずっと上手だ。


どれだけ練習してもニナの演奏はうまくなっていない。


それは聞いていれば一目瞭然だった。


ニナは練習を頑張りすぎて完全なスランプ状態だ。


そこから抜け出せるのはいつになるのか、当人にだってわからない。


課題曲の発表までに間に合うか、いや、コンクールまでに間に合うかどうかもわからない。


下手をすればそのまま楽器から離れてしまう可能性だってある。


「はい、じゃあみんな教室に入って」


まだ練習時間中なのに先生にそう言われてアサミはフルートを片手に教室内へと移動した。


広い音楽室だけれど50人も入れば結構密集してしまう。


更には楽器が加わるのだから、少し窮屈なくらいだ。


「それじゃ今から課題曲を合わせて演奏してみましょう」


先生の指示に従い、パートごとに別れて座る。


アサミと右隣はサトコで、左隣りがニナだ。


背の低いニナが椅子に座ると更に小さく見える。


そして演奏が始まったとき、すぐに気がついた。


つい昨日までスランプ状態で下手な演奏をしていたニナが、格段に上達していたのだ。
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