闇夜ヨルの恐怖記録 5
左隣りから聞こえてくる旋律は、サトコのものよりも切なく感情を動かされるようなものだった。


危うく自分の演奏がおろそかになってしまいそうで、慌てて集中した。


だって、いつの間にこんなに上手になったの?


それでもまだ少しアサミのほうが上手だったが、その差はグンと縮まっていた。


このままじゃ、ソロパートが危ういかもしれない。


そう考えた瞬間アサミの音が乱れた。


低音を吹くところでひとりだけ甲高い音を出してしまい、慌てて修正する。


アサミが驚いた表情でこちらを見ているのがわかった。


大丈夫。


こんなのただのまぐれだから。


それに、私がニナくらい練習すればすぐに追い越すんだから。


アサミは自分自身にそう言い聞かせたのだった。
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