闇夜ヨルの恐怖記録 5
話を聞きつけた他の委員会の生徒たちも近づいてきたけれど、誰も虹色に光る種について知っている人はいないようだった。


「そんな種ができる木や花なんて、うちの学校にはないよね」


「うん。どれもごく普通の種だね」


「そうなんですか……」


委員会の人たちならなにか知っていると思ったのだけれど、残念だ。


肩を落として音楽室へ向かうとすでに部活は開始されていて、ニナはいつもの廊下の一番奥で練習をしていた。


その音色を聞いていると焦燥感にかられて慌てて準備を進める。


どう聞いたってニナの方がまだまだ下手だけれど、これ以上上手くなられたら困るという気持ちが産まれてくる。


いつの間にかアサミはニナのことを意識して、ライバルとして見るようになっていたのだ。


「アサミ、体調大丈夫?」


アサミが来たことに気がついてサトコが駆け寄ってきた。


「うん、もう大丈夫。それより練習しなきゃ」


そう答えてフルートを構える。


大きく息を吸い込んで、そして音を出す……。


それはただのチューニングだった。


それなのに近くにいた部員たちの視線が一線に集まってくる。
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