闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

どうしてこんなに急に上達したんだろう?


帰宅した後もアサミは不思議でジッと自分の手を見つめた。


部活は休まずに出ていたけれど、特別な練習をしていたわけじゃない。


みんなと同じ練習をしてきただけだ。


「みんなと違うこと?」


ふと自分で考えたことをそのまま口に出した。


自分とみんなとの差なんてほとんどない。


幼い頃から音楽に接してきたかどうかの違いくらいなものだ。


それだけでももちろん差は生まれるけれど、今回みたいに突然大差ができることはないはずだ。


でも……。


アサミは出窓へ近づいて随分大きくなった植物を見つめた。


唯一自分だけかもしれないと感じているのは、この種を拾い、そして育てているということだけだ。


でもまさかこの種のおかげて急にフルートが上手になるなんてありえない。
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