闇夜ヨルの恐怖記録 5
そう考えて少し笑い、左右に首を振る。


この植物はたしかに珍しいものかもしれないけれど、きっと市立図書館とかで調べればすぐになんなのかわかるはずだ。


「アサミ、今日は演奏してくれないの?」


いつの間にか母親が部屋の中に入ってきていて、そう聞いてきた。


「今日は……」


やらない、と答えかけて今日もフルートを持って帰ってきたことを思い出した。


昨日自宅で練習したことが良かったのかもしれないと思って、今日も持って帰ってきていたのだ。


「そうだね。少しだけしようかな」


気を取り直してフルートを構えると、母親はソファに座って目を閉じた。


そんな風に思いっきり聞く準備をされるとなんだか緊張してしまう。


少し照れながら最初のひと吹きを吹き込む。


心地いい音色が耳に響き、葉が左右に揺れ始めた。


音を奏でるにつれて茎はどんどん成長していく。


それはまるでダンスをしながら植物が成長しているようにも見えた。


最後まで吹き終えると、ベッドに座っていた母親が大きく息を吐き出して「すごいわ!」と、拍手してくれた。
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