闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

家で1度練習をするだけで劇的にうまくなるんだから、もう居残り練習なんてする必要はなかった。


アサミが家でフルートを吹くと母親も植物も喜んでいるようだし、近所の人からの評判もよかった。


「アサミ、これお隣さんがくれたの。コンクールのときのおまりだって」


「えぇ、もらっちゃっていいの?」


「いいのいいの。お隣さんのおばあちゃんね、認知症であまり笑わなくなっていたらしいの。それがアサミのフルートを聞いているときだけはすごくいい笑顔になるんですって」


初耳だった。


まさか自分の演奏が人にそんな影響を与えていたなんて。


驚いて絶句していると、母親がお守りを持たせてくれた。


それは勝つ守りと言って勝負事に強くなるお守りみたいだ。


赤い生地に金色の刺繍で勝つと書かれている。


アサミはそれをカバンにつけて翌日登校した。


さっそくお守りに反応してくれたのはクラスの友人たちだった。


みんな赤い生地のお守りがかわいいと言ってくれる。
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