闇夜ヨルの恐怖記録 5
「アサミの演奏は本当に上手だもんね」


他の部活をしている友人が関心したように声をかけてくれた。


「ごめん、他の部室まで聞こえてうるさいよね?」


その子は文芸部の生徒だから、本当なら静かな場所で読書や考え事をしたいはずだ。


「ううん! アサミの演奏はなんていうか、色々な想像をかきたててくれるんだよね。だから文芸部のみんな、アサミの演奏に聞き入っちゃってるんだ」


「それ、本当に」


「本当だよ。あ、私今度吹奏楽部を題材にした小説を書くことにしたの。だからアサミ、色々と教えてくれる?」


「もちろん、それはいいけれど……」


自分の知らないところで自分の演奏が広がっていっている。


そんな気がして、嬉しい反面少しだけ恐い気がしたのだった。
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