闇夜ヨルの恐怖記録 5
コンクールで舞台の上に上がることはなれている。


だけどそれは隣に同じようにフルートを吹いている子がいるからだ。


だからいつもどおり安定した演奏ができるようになる。


けれど突然ソロを入れられると、それはもういつもとは違うものになってしまう。


舞台上でひとりで演奏しているところを想像してみると、アサミは血が騒ぐのを感じた。


やってみたいと瞬時に感じる。


同時にそんな緊張に耐えることができるのかどうか、不安もよぎった。


「それならアサミがいいと思います!」


右手を上げてそう発言をしたのはサトコだった。


アサミは驚いて右隣に座っていたサトコを見つめる。


サトコは一瞬ウインクしてみせた。


「確かにアサミさんの演奏は1位2位を争うくらい上手ね。だけど一応ふたりくらい選出しておいて、課題曲をどれくらい演奏できるかで決めたいと思うのよ」


大木先生の言葉にサトコは手を引っ込めた。


ふたりということは、私以外にもうひとりということで合っているはずだ。


誰になるんだろう?


アサミはフルートパートをしている他の4人へ視線を向ける。
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