闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

その日の部活は全く身に入らなかった。


先生からも何度も注意され、直そうとしても直すことができない。


音は乱れ、メロディもテンポもめちゃくちゃで、アサミがみんなの足を引っ張ることになってしまった。


「アサミさん、あなた一体どうしたの?」


部活終わりにひとり準備室へ呼び出されてしまった。


「ごめんなさい」


うなだれて謝ることしかできない。


「あれだけ上手だったのが、たった数日でこれほどできなくなることなんてないわ。あなた、上手な演奏をしていたとき、どうやっていたの?」


「どうって……」


そんな質問をされても自分でもわからなかった。


ただ単純に、今までと同じように演奏をしていただけなんだから。


その時虹色の種のことが思い浮かんできた。


そう、今と違うところはあれを拾って育てていたということだけ。


「とにかく、今のままではソロパートを任せることは難しいわ」


先生のため息交じりの言葉が胸に突き刺さる。


アサミは軽くお辞儀をして、準備室から逃げ出したのだった。
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