闇夜ヨルの恐怖記録 5
それに、女性はアサミになにか言いたそうでもある。


「な、なんですか?」


恐る恐る声をかけると、女性はアサミの前で立ち止まった。


虹色のワンピースが風でフワリと揺れている。


その姿はどう見たって中学校内では異質なのに、誰も彼女の存在に気がついていないように歩き去る。


「アサミさん、私を育ててくれてありがとうございました」


女性は突然鈴の音のような声でそう言い、頭を下げてきた。


アサミにはなんのことだからわからずに返事ができない。


「私は開花花です。あなたが出窓の鉢植えで育てた、あの花です」


「開花花……?」


「はい。あの種は努力を続けてきた人にしか見えません。そして、見えた人に育ててもらっているんです」


女性の話にアサミは首をかしげっぱなしだ。


だけど虹色の種について調べてみても、誰も知らなかったことを思い出す。


みんなはあの種が見えていなかったのかもしれない。
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