闇夜ヨルの恐怖記録 5
「私達は人の努力を栄養として育ちます。そのお礼に能力を渡していたんです」


「それってもしかして、私が急に上達したことと関係してるの?」


聞くと女性は頷いた。


アサミは大きく息を吸い込む。


「それならもっとお礼してよ! 私最近全然演奏がダメになってるんだから!」


つい、声を荒げてしまう。


女性はすまなそうにうつむいて左右に首を振った。


「それはできません」


「どうして!?」


「あなたは確かに努力家でした。演奏に熱心でした。でもそれは、能力を渡す前までのことです」


そう言われてハッとした。


急に上達しはじめた時期を堺に、友達と遊びに行く回数が増えた。


部活をサボルこともあった。


「で、でも、そのくらいの息抜き誰だってしてるし」


「ですよね。でも私は努力を栄養としているので、あなたが努力を怠った時点で枯れてしまったんです」


あ……。


綺麗な虹色の花が茶色く変色してしまったことを思い出す。


あれは私のせい……?
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