闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

特別に与えられていた能力はもうなくなった。


それでもアサミはソロパートを自分のものにしたかった。


まだ昼休憩時間だというのに、フルートの音が響いてくる。


それはお世辞にもとびきり上手だとは言えないものだったけれど、音色に引き寄せられるように生徒たちが集まってくる。


その中にはサトコの姿もあった。


アサミはサトコが来ていることにも気が付かずに練習を続ける。


ソロパートが決まるのは今日だ。


今更練習したって遅いのかもしれない。


それでもアサミは練習を続けた。


昼休憩の時間をすべて使って、全身全霊を込めて。
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