闇夜ヨルの恐怖記録 5
☆☆☆

「それでは今からソロパート決めに移りたいと思います」


先生の言葉で部員たちはみんな静まりかえった。


部室の中には緊張感が漂っていて、アサミはゴクリと唾を飲み込む。


今楽器を手にしているのはニナとアサミの2人だけだ。


「まずはニナさんから」


名前を呼ばれたニナは背筋を伸ばして前のステージへと歩いている。


緊張しているためか、手足がぎくしゃくとした動きになっている。


「よろしくお願いします」


か細い声で言い、一度お辞儀をしてフルートを口に近づける。


アサミは気がつかない間に膝の上で両手を握りしめていた。


頑張れ、ニナ!


心の中で応援する。


努力してきたのはずっと見てきた。


アサミよりもずっと下手だと思っていたけれど、ここ一週間で見違えるほどに上手になった。


そしてニナの演奏が始まる。


目を閉じれば浮かんでくるような情景。


優しい旋律。


思わずみんなが目を閉じて聞き入ってしまう。
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