闇夜ヨルの恐怖記録 5
どういうことなのかと部室内にざわめきが走る。


先生は申し訳なさそうな表情を生徒たちへ向けて「ごめんなさい。先生、どちらかひとりを選ぶことができなかったんです」と、頭を下げた。


アサミはニナに視線を向けた。


ニナも戸惑った様子でこちらを見ている。


「途中まではアサミさんで決まりだと思っていました。だけどニナさんの最近の成長は著しいものがあったんです」


それはきっと誰もが感じていたことだろう。


ニナは誰よりも先に来て、誰よりも後に部室を後にしていたのだから。


「アサミさんも、これから先頑張るわよね?」


先生に言われてアサミはとっさに立ち上がり「はい」と返事をした。


先生はやっぱり、すべてお見通しだったのだ。


「では、今回のソロパートはアサミさんとニナさんで半分ずつ吹いてもらうことになります。途中で奏者が変わるので普通よりも難しいかもしれないけど、2人共頑張れるわね?」


アサミとニナは顔を見合わせて「はい!」と、同時に返事をしたのだった。
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