わけあってイケメン好きをやめました
「俺の会社を手伝ってくれないか? 頼めるのは、堤しかいない」

「……私が断れないとわかってて……タチが悪い!」


 私たちはきっと困ったときは無条件で助け合うのだろうと、大学生のころになんとなく感じた懐かしい気持ちがよみがえってきた。

 この人は今、間違いなく私に助けを求めている。


「わかりました! 今の会社は辞めます。虹磨さんを手伝えばいいんでしょ?」

「ありがとう」

「仕方ないじゃないですか」


 成功か失敗か、私の人生を賭けた大博打に挑むような気持ちになったが、もうこれは仕方ないのだ。
 私はどうやったって虹磨さんの網から逃れられない。


「堤を路頭に迷わせはしないから。もし失敗して会社を潰したとしても、俺が堤を養うよ」

「バカなこと言わないでくださいよ。妻でも恋人でもない私を養う必要なんかないでしょ? 食い扶持(くいぶち)くらい自分でなんとかしますからご心配なく」


 先にこれくらいきっぱりと断っておかなければ、虹磨さんは本気で私に生活費を渡しそうだ。
 私は独身だし借金もないのだから、ダメならどこかでまたコツコツ働けばいい。

 でも、私は虹磨さんのこういうところが好きだと気づいた。もちろんそれは“人として”。

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