わけあってイケメン好きをやめました

 それからしばらくして、私は虹磨さんの会社で働くことになった。
 社長である虹磨さんが乗り気な仕事も、そうでない仕事も、すべて懸命に取り組んでいるうちに、会社が軌道に乗ってくる。

 私は広告代理店で働いていたときよりも残業は増えたけれど、今のほうがやりがいがあるので辛く感じない。
 悔しいけれどなにもかも虹磨さんの思いどおりだ。


 会社を設立してから五年が経ち、私は現在三十一歳になる。あっという間に三十代に突入だ。

 同級生の友達はどんどん結婚していくけれど、私は焦ったりしない。
 結婚なんて縁だし、したくなったときが適齢期だと思う。年齢なんて関係ない。私は私だ。

 虹磨さんも長い間彼女がいなかったけれど、絢音ちゃんというかわいい恋人が出来た。
 ふたりは少し年齢差があるものの、とてもお似合いだ。

 私も絢音ちゃんが大好きなので、万が一“RED PURPLE”のボーカルみたいに彼女を傷つけたら、そのときは虹磨さんをグーで殴りたおすと固く決心している。
 
 まぁでも、大丈夫かな。
 絢音ちゃんを甘く見つめる態度を隠しきれていない今の虹磨さんが、他の女とどうこうなんてあるわけがないと私も信じている。



「美和さん、お久しぶりです。俺のこと覚えてますか?」


 この日、テレビ局で打ち合わせがあった帰り、近くのカフェで休憩していた私にひとりの男性が話しかけて来た。


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