わけあってイケメン好きをやめました
「仕事、まだ続けてるんですよね?」

「え?」

「虹磨さんの会社で働いてるって、前に言ってたじゃないですか」


 そうか、三年前の飲み会の席でそんな話をしたかもしれない。
 虹磨さんが会社を設立した話になり、引っ張られるように私も転職してそこで働いているという話題になったような……


「うん。虹磨さんのサポートしてる」

「美和さんは昔から面倒見がいいですもんね。虹磨さんはずいぶん助かってるでしょうね」


 後輩たちのほとんどが、私を“堤さん”とか“堤先輩”などと呼ぶ中、徹平くんだけは『美和さんって呼んでいいですか』と最初に聞いてきたのを思い出した。
 大学時代からの知り合いの男性では彼だけだ。“美和さん”呼びをしてくるのは。


「実は俺も一年くらい前に転職したんですよ」

「そうなの?!」

「はい。塾の講師をしてたんですけど、今は芸能事務所でマネージャーをやってます」


 あぁ、だからテレビ局の近くにあるこのカフェによく出入りしているのかと納得がいった。


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