わけあってイケメン好きをやめました
「全然業種が違うのに、ずいぶん思い切ったね」

「たまたま社員を募集してたので。もしかしたら美和さんと接点が持てるかもと思って」


 徹平くんはハニかむような笑みを見せ、アイスコーヒーに口を付ける。
 今のはどういう意味だろう。よくわからなくて、私も笑って小首をかしげた。


「三年前に会ったとき、美和さんがすごく綺麗になってて驚いて……って、大学のころからめちゃくちゃ美人だとは思ってたんですよ! でもあの飲み会で胸を揺さぶられたっていうか……俺、なにを言ってるんでしょうね」

「ううん。私を褒めてくれたんだよね? ありがとう」


 たとえお世辞だとしても、昔から美人だと言われれば誰だってうれしいものだ。
 特にさっきの徹平くんは、なんだか一生懸命訴えている感じだったから、私も茶化さずに素直にお礼を言えた。


「結局あのとき連絡先も聞けないまま飲み会が終了したんで、あきらめなきゃと思ったんですけど。でも、俺も似た業種の仕事に就けば、また会えるかもと期待したのも本当です」

「……ん?」


 今度こそ、彼がなにを言いたいのかわからない。
 あきらめなきゃ、って……なにを? また会えるかも、って……私と?

 ポカンとする私に対し、徹平くんはふんわりとしたやさしい笑みを浮かべた。

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