わけあってイケメン好きをやめました
【番外編】 澤村虹磨の思い
【 番外編 澤村虹磨の思い 】
***
俺がその動画を目にしたのは、本当に偶然だった。
会社のスタッフが休憩時間中に話題にあげていたのがきっかけだ。
若い女性がギターで弾き語りをしている。曲は自作だろうか、オリジナルみたいだ。
聴いた瞬間、声が抜群にいいと思った。透明感もあるし、特に高音になると心にじんと響くような感じで。
発声からしてプロではないようだが、これはいったい……誰だ?
「堤、この動画知ってるか?」
「ああ、今バズってますよね」
「これは誰だ?」
堤が仕事をするデスクのそばに立ち、真面目に聞いているというのに、彼女はポカンとしたあと小さく溜め息を吐いた。
「知りませんよ。有名人ではないし、素人が匿名でアップしてるんですから私がわかるわけないでしょう?」
「連絡を取ってくれ。出来れば会いたい」
「また無茶な頼みごとを! 今の私の話、聞いてました?」
ブツブツと堤が文句を並べるのはいつものことだ。
だけど堤は仕事を放置したりしない。それを知ってる俺は「頼んだぞ」と背中をバチンと叩いて発破をかけた。
大和にも同じように、動画の人物の手がかりを見つけてほしいと依頼した。
もしかしたらミュージシャンの卵かもしれないと思ったが、俺のアテははずれ、手がかりひとつ掴めないままだった。
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俺がその動画を目にしたのは、本当に偶然だった。
会社のスタッフが休憩時間中に話題にあげていたのがきっかけだ。
若い女性がギターで弾き語りをしている。曲は自作だろうか、オリジナルみたいだ。
聴いた瞬間、声が抜群にいいと思った。透明感もあるし、特に高音になると心にじんと響くような感じで。
発声からしてプロではないようだが、これはいったい……誰だ?
「堤、この動画知ってるか?」
「ああ、今バズってますよね」
「これは誰だ?」
堤が仕事をするデスクのそばに立ち、真面目に聞いているというのに、彼女はポカンとしたあと小さく溜め息を吐いた。
「知りませんよ。有名人ではないし、素人が匿名でアップしてるんですから私がわかるわけないでしょう?」
「連絡を取ってくれ。出来れば会いたい」
「また無茶な頼みごとを! 今の私の話、聞いてました?」
ブツブツと堤が文句を並べるのはいつものことだ。
だけど堤は仕事を放置したりしない。それを知ってる俺は「頼んだぞ」と背中をバチンと叩いて発破をかけた。
大和にも同じように、動画の人物の手がかりを見つけてほしいと依頼した。
もしかしたらミュージシャンの卵かもしれないと思ったが、俺のアテははずれ、手がかりひとつ掴めないままだった。