わけあってイケメン好きをやめました
「……堤は?」


 仕事の案件で確認することがあったのに、会社のデスクに堤の姿がなく、隣の席のスタッフに居場所を尋ねる。


「美和さん、カフェに行ったんだと思います。この近くの。そこのコーヒーがおいしいって言ってたので」


 それを聞き、あそこか、と思い当たる店があった。
 急ぎの仕事ではなかったが、どうせなら俺もうまいコーヒーが飲みたいので、後を追うようにそこへ向かう。

 ビルの一階にあるカフェの店内に、堤が座っているのが見えた。


「堤、またサボリか?」


 彼女の向かい側にある椅子に腰を掛けると、あからさまに堤は口を尖らせた。


「仕事はぬかりなくやってますよ。ここでコーヒーを飲むのは息抜きなんです」


 そばにいた店員の子とは親しそうで、なにやら話していたところを俺が邪魔したようだ。

 別にいいけどな、サボってコーヒー飲むくらい。
 堤は俺の右腕だから、他のスタッフの何倍も働いてくれてるわけだし。

 俺はホットコーヒーを注文し、とりあえず確認事項があった仕事の話を済ませる。

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