わけあってイケメン好きをやめました

「なんだよ、その顔は」


 思わずそう言いたくなるくらい、堤の顔が気味悪くニヤニヤしている。


「元々こういう顔ですよ」

「嘘つけ」

「でも、珍しいですよね。虹磨さんもやっぱり男なんですねー」


 むかつく。昔から俺をからかおうとしたり生意気な口をきく後輩は堤だけだ。
 俺を異性としてまったく認識していないところは、楽ではあるが。
 

「正直に言っただけだろ」

「そうなんですよ、あの子かわいいんです。口説くなら早くしないと!」


 なぜそうなるんだ、と堤に冷ややかな視線を送る。急かされる意味がわからない。


「あの……ひとつお願いがあるんですけど……」


 急にニヤけた顔を引っ込めた堤が、小さな声で俺に話しかけた。

 頼みごと、か。
 言いにくそうにするのは、堤が自分でどうすることもできない事柄だからだろう。

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