わけあってイケメン好きをやめました
 ライブ会場の控室の奥にある人目につかないスペースで話していたのに、私は声を荒げてしまった。
 だんだん感情のコントロールが難しくなってきて、泣かないでいようと思っていたのに、ボロボロと涙が勝手に流れて頬を伝っている。

 浮気をされたのは悲しい。だけど真剣に心から謝罪してこない利樹に腹が立つ。


「俺に土下座でもさせるつもりか?」


 今にも舌打ちしそうな彼の表情を見て、私はさらに深く傷ついた。


「なに言ってるの? たとえ土下座したって私の傷は癒えないよ! 何度目だかわかってる?」


『二度あることは三度あるって言うでしょ』
 一週間前に円香に言われた言葉が頭をよぎった。
 まさにそのとおりだったけれど、こんなに早く実感する日が来るとは思いもよらなかった。


「つい一ヶ月前も浮気したばかりだし、私のこと好きじゃないの?!」

「好きだよ。でも俺、モテるんだよな……」


 モテるから仕方ない、浮気は容認しろ、とでも言いたげな彼の顔を目にし、私は愕然とした。

 きっと、彼の浮気癖はもう直らない。絶対にまた同じことが起こるだろう。
 かわいい子に言い寄られたら、利樹は私の存在など忘れてホテルに行ってしまう。

 私がこの先もそれを見て見ぬフリをして付き合っていくか、……別れるか、だ。

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