わけあってイケメン好きをやめました
 完全に誤解していた。“広告”といってもウェブCMの制作が主らしい。
 私は雑誌の広告や、折込チラシなどだと思っていた。紙と動画では、かなり違う。
 それに、広告だけとも限らないようだ。クライアントが必要とする映像を作る仕事もしている。

 私の勘違いをそのまま美和さんに話したら、吹き出すように笑われた。
 美和さんは三十歳くらいだと思うけれど、肩までの艶やかな黒髪が印象的で、キャットアイの目元が女の色気を醸し出している綺麗な人だ。
 
 私も美和さんのようになれたらいいのに。カッコいい彼女は働く女性として憧れの的だろう。


「そうだ、今日はどうして落ち込んでたの? 絢音ちゃんらしくないわ」 

「就職がなかなか決まらなくて……。しかも、年が明けた来月からはここのシフトも減らされちゃうんですよ」


 年明け早々に正社員がひとり、この店舗に赴任してくるらしい。
 そうなると、自然とバイトの人員はそんなに要らなくなる。
 クビにはならないけれど、勤務時間を減らされるのは必至で、バイトの私はかなりの収入減になってしまう。


「掛け持ちで他のバイトも探さないといけないですかね」

「それは大変だね」

< 21 / 151 >

この作品をシェア

pagetop