わけあってイケメン好きをやめました
 就職が決まっているのなら、勤務時間が少々減ったとしても数ヶ月の我慢だけれど、私はそうはいかない。
 シフトを減らされた分、どこか違うところでバイトをしないといけなくなるだろう。
 私としてはスケジュール管理が面倒だし、出来れば掛け持ちはしたくない。


「堤、またサボリか?」


 突然私の背後から声がして、背の高い男性が美和さんの向かいの椅子に腰をかけた。
 

「仕事はぬかりなくやってますよ。ここでコーヒーを飲むのは息抜きなんです」


 美和さんはいつもひとりでやって来て、コーヒーを飲みながらタブレットを見たりしていることが多いので、誰かと一緒なのは珍しい。
 ふたりの今の会話からすると、待ち合わせをしていたわけではなさそうだけれど。

 私はあわてて「いらっしゃいませ」と静かに声をかけ、その男性にグラスの水を持って行った。


「ホットコーヒー」

「かしこまりました」


 注文を受け付け、カウンター内に戻った私は、その男性に見覚えがあることに気づいた。

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