わけあってイケメン好きをやめました
 たしか美和さんと同じ会社の人だ。その証拠に、男性が鞄から資料を出したり、美和さんが自分のタブレットを見せながら話をしている。

 それにしても高身長で脚が長く、スタイルのいい人だ。筋肉の付き具合というか、全身のバランスが整っている。
 黒髪から覗く凛々しい眉、スッと通った鼻梁、横に真っすぐ引かれた形のいい唇、シャープな輪郭……どこをどう見てもイケメンだ。

 この店で何度か見かけたことがあるはずなのに、あんなにイケメンだとは以前は意識していなかった。
 利樹と付き合っていたころは、彼しか見えていなかったのだろう。

 シンプルな白いシャツと黒のジャケットがよく似合っていて、うっとりするほど“大人の魅力”が満載だ。

 見とれている場合ではない。ホットコーヒーを乗せたトレーを持ち、私は再びふたりがいるテーブルへ向かった。


「それと、例の人物と連絡は取れたか?」

「まだです。DMは送ってみましたけど返事はないですね。知り合いにも心当たりがないか聞いています」


 ふたりは真面目に仕事の話をしているようだ。眉根を寄せて難しい顔を突き合わせている。


虹磨(こうま)さん、そんなにこの子が気になります?」

「透明感のある良い声だよな」


“虹磨さん”という名前なのだと今初めて知ったけれど、声が良いのはあなたもですよ、と言ってしまいそうなほど、低くて素敵な声だ。

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