わけあってイケメン好きをやめました
「あ、そうだ、絢音ちゃん、」


 仕事の邪魔をしてはいけないので、すぐに立ち去ろうとしたが、美和さんに呼び止められた。
 そのとき、彼女が持っていたタブレットの画面が目に入り、驚いて心臓が口から飛び出そうになった。


「この動画知ってる? すごくバズってるやつ」 
 

 顔を引きつらせそうになったが、なんとか笑みを絶やさずに小首をかしげた。

 不自然にならないようにとぼけてみたけれど、それは私がアップした動画だった。


「若い女の子が歌ってるんだけど、曲もいいのよ」

「その人を探してるんですか?」

「そうなの。虹磨さんがコンタクトをとりたいって」


 白々しく、「見つかるといいですね」と無難な言葉を口にして、私はそっとその場から逃げた。


 利樹と別れたあと、頻繁に円香と飲みに行ったりカラオケで熱唱したりしていた。
 家でも好きな音楽を散々聴き、久しぶりにギターを弾いたりして、傷ついた心を自分なりに修復していたのだ。

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