わけあってイケメン好きをやめました
「仕事は雑用が多いけど大丈夫?」

「なんでもやります!」


“なんでも”は言い過ぎだったかもしれない。無表情だった虹磨さんの口の端が緩んで、一瞬笑ったように見えた。


「ここの事務方のボスは堤だ。まずは彼女から仕事の全体の流れを聞くといい」

「採用……でいいんですか?」

「知らない間柄でもないしな。まぁ、親しかったわけでもないが。堤が君を気に入ってるから」


 虹磨さんは履歴書から目を離し、背筋を伸ばして私に視線を向けた。
 まずい。イケメンに熱を上げるのはやめようと心に決めたはずなのに、見つめられるとドキドキしてしまう。


「質問、ある?」


 質問など考えてこなかったので、私は一気にあわててしまった。
 バイトの面接だからと軽視していたわけではないが、業務でわからないことがあれば、その都度尋ねればいいと思っていたのだ。
 だけど、今ここでなにか聞いたほうがいいのだろうか。焦りながらも頭をフル回転させた。

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