わけあってイケメン好きをやめました
「もうひとり来るって言われたんですけど……」


 そんな話をしているところへ、オフィスの扉が開いて「堤さん、お疲れ様です」とその人物が姿を現した。


「鳥飼 大和!!」


 雪哉さんを直視したときよりもさらに驚いた私は、大声で彼のフルネームを叫んでしまった。
 あわてて口を覆ったがもう遅い。「失礼しました!」と深々と頭を下げると、フフッと笑ってくれた。


「新人さんかな?」

「はい! 海老原 絢音と申します。大和さんのファンなので、すごくビックリしてしまって。ごめんなさい!」


 ひとりでおろおろしている私を見て「面白い人だね」と彼は美和さんに話しかけていた。


「雪哉はもう来てるんだ。アイツはいつも早いな」


 大和さんは窓ガラス越しに雪哉さんの姿を発見し、そのまま社長室へと入っていった。

 私は給湯室で大和さんの分のお茶を準備しながら、これは夢ではないかと頬をつねってみた。
 イケメン人気俳優と大物ミュージシャンが、同時にうちの社長室にいるなんて……

 仕事の話ならば、マネージャーなどほかの人物も一緒のはずだから、プライベートで立ち寄ったのだろうか。
 しかし三人が友人だとは思いもしなかった。

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