わけあってイケメン好きをやめました
 私は準備したお茶と塩大福をお盆に乗せ、再び社長室の扉をノックした。
 緊張が走る。大和さんが加わったこの部屋は、きっと異世界空間だろう。


「失礼します」と声をかけて中へ入ると、三人の会話がピタリと止まり、大和さんがじーっと私を凝視した。


「先ほどは本当にすみませんでした」


 大和さんにお茶と塩大福を出しながら、小さな声で謝罪して頭を下げた。


「なにかあったの?」


 興味深げに問いかけてきたのは雪哉さんだ。


「俺のフルネームを叫ばれた」


 大和さんの答えに雪哉さんは笑ったが、虹磨さんは瞬時に眉をひそめた。
 当然だ。自分のスタッフの失態を笑えるわけがない。


「仕方ないよな。彼女、俺のファンらしいから」

「あの、大和さんのファンなのは私の親友なんです。それはそれはもう、大ファンで!」

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