わけあってイケメン好きをやめました
 気がつけばそれから四ヶ月が過ぎ、三月も終わろうとしている。
 私はあれから結局、どこの会社にも正社員としての内定がもらえず、また就職浪人となった。

 カフェのバイトは籍は置かせてもらっている状態だが、平日はもうシフトには入っていない。
 こっちのバイトでしっかり働かせてもらえるため、完全に軸足を移した。もうカフェは辞めてもいいと考えているところだ。


 あれからたまに雪哉さんがオフィスにやって来ると、私を興味深げに見てきたり、「虹磨さんってカッコいいよね」と突然言われたりしたけれど、私には意味がわからない。

 相手は国宝級イケメンなので、スマートに対応したいのに、私はいつも混乱してあせってしまう。
 虹磨さんが私たちを見て「絢音で遊ぶな」と、雪哉さんに注意していたので、からかわれていたのだろうけれど。

 大和さんは雪哉さんと比べると来る頻度が高いので、顔を合わせることも多くなった。
 大ファンである円香に言うと嫉妬されてしまうし、守秘義務もあるので、親友とはいえこの事実は内緒だ。

 大和さんは落ち着いているものの、私を観察するような視線を向けてくるという意味では雪哉さんと変わらない。
 私は二十三歳の一般女子で普通のバイト人員だ。大物ミュージシャンに関心を持たれる対象ではないはずなのに。

< 47 / 151 >

この作品をシェア

pagetop