わけあってイケメン好きをやめました
 彼のライブのチケットはいつも争奪戦で、即完売してしまって手に入れられないことで有名だ。
 それほどの人と直接会話をしているだけでもすごいのに、生歌を聴かせてもらえるなんて、贅沢にも程がある。
 ギャラを払わないといけないのではないかと気を回すくらいに。


「三人が嫌なら堤さんも誘おう。あ、よかったら友達も連れてくる? 俺のファンの子」


 目の前で大和さんが歌ってくれたら、円香はきっと失神するだろうな。本当に大ファンだから。
 円香を大和さんに会わせてあげたい。その気持ちは以前からあったので、この話に一瞬飛びつきそうになった。


「その代わり、カラオケに行ったら絢音ちゃんも歌ってほしい。自分は歌わないっていうのはなしで」


 なぜか後半の言葉に力がこもっていたように感じた。気のせいではないと思う。

 たしかにカラオケに行っても、ほかの人の歌に手拍子するだけで歌わない人はいるけれど、必ず歌うように最初に念押しされるとは。

 ……いや、なにか変だ。嫌な予感がする。

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