わけあってイケメン好きをやめました
 彼はミュージシャンとして才能がある。私はその部分を尊敬している。
 円香は普通だと評価を下したが、彼の歌声は声量があってとても甘いし、作り出す楽曲もすごく素敵だ。


「私は鳥飼 大和(とりかい やまと)のほうが断然いいわ」

「大和みたいな大物と比べないでよー」


 私が口を尖らせると、円香は運ばれてきた創作つくねに箸を伸ばして口に放り込みながら笑った。

 鳥飼 大和は、誰もが知るイケメン人気ミュージシャンだ。
 まだまだ知名度も低く、ライブハウスで細々と活動している利樹と比べないでもらいたい。


「だって大和の曲、めちゃくちゃ良くない?」

「うん。それは認める。だけど作曲はしてないよ?」


 たしかに大和の曲を聴いていると、心に刺さって泣きそうになる。
 私にはどの曲もメロディーがハマるというか、魂を揺さぶられるのだ。

 だけど大和自身は作曲しておらず、他の人から楽曲提供を受けているみたい。


「作曲者は“Xinobu(しのぶ)”になってるもんね」

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