わけあってイケメン好きをやめました
 虹磨さんはエレベーターを降りたあと、ビルの裏手にある駐車場へと足を進めた。
 濃いブルーのSUV車が開錠され、助手席の扉を開けた虹磨さんは私に乗るように促した。

 この見慣れないエンブレムは海外の車だと思うけれど、虹磨さんのイメージと合っていて、まるでCMに出てくるみたいにカッコいい。


「もしもし、堤? 絢音とちょっと出かけるから」


 美和さんに電話していたようだが、言うだけ言って一方的に切ったように感じた。大丈夫だろうか。


「美和さんの許可は出ましたか?」

「許可っていうか、報告な。さすがにいきなり消えたら心配するだろ?」


 たしかにそうだ。どこかにおつかいに出るときも、私は必ず美和さんに声掛けしている。


「短い通話時間でしたけど、あれで会話が成立したんですか?」

「『ちょっとじゃ済まないくせに~』って返されたから、そのまま無言で切った」

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