わけあってイケメン好きをやめました
「……そうだな。もし堤がいなくなったら、あの会社は立ち行かないからたたむことになるし。居てもらわないと困る」


 虹磨さんは私の言いぐさで不機嫌になるだろうと予測したのに、意外にもそうならなかった。

 虹磨さんにとって美和さんは大事な仕事のパートナーだと、彼自身もそこは自覚しているようだ。
 だったらもっと大切にしてほしい。美和さんがこの先ずっとどこにも行かない保証などないのだから。


「明日、美和さんに謝らなきゃ」

「俺が連れ出したんだから、全部俺のせいにすればいい」


 鵜呑みにしてそんな言い訳をするのは、ただの子どもでしかない。
 虹磨さんの電話で、美和さんは状況を把握済みだ。それでも私はいきなり仕事を放置してしまった件を自分の口から謝りたい。
 

「絢音はほんとに堤が好きなんだな」

「はい。私が男なら絶対惚れてます!」

「ぶはっ!」


 力を込めて本音を言えば、なぜか隣で爆笑された。
 驚いて虹磨さんのほうを向いたが、この人は前を向いて運転している横顔まで綺麗だった。

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